中野慧著『文化系のための野球入門〜「野球部はクソ」を解剖する〜』(光文社新書)
入門書にしては京都の町家のように奥行がどこまでも深くて(笑)、エンターテインメント精神が溢れていて、すごく面白かったです!
網羅性がすごい。「360度どこにも死角なし!」くらいの勢いで、とにかく野球に関する先行文献をバリバリと貪欲に呑み込んでいくスタイル、あらゆる球を拾いに行く守備範囲の広さというか、胃袋の大きさに驚嘆します。
かといって学術論文のような堅苦しさはなくて、ちゃんと面白く読ませる文章なのはさすが。
どんな極端な説にも「一理はある」と言って、いったんは受容して呑み込んでいく著者の姿勢に、よく言えば「公平さ」、悪く言うと「狂気」、言い直すと「徹底した探究心」を感じて、とても面白かった。
盛りだくさんな内容ですが、とくに面白かったポイントは、
- アメリカの野球史がかなりウソ松(出自を粉飾)
- 日本では武道に擬態して定着してきた
- 天狗倶楽部の破天荒さ
- 新聞社と野球のグレーな関係
など。
私が野球の歴史にまったく無知なため、知らないことばかりで、とても新鮮でした。
マツコ・デラックスの「野球部は十中八九クソ野郎」説が、この本の先導役となっているわけですが、そんな説が生まれてくる背景や文脈も一筋縄ではなく、複雑怪奇に絡み合っていることが興味深くもあり、恐ろしいことでもありました。
読後、とくに印象に残ったのが「天狗倶楽部」です。
最近、個人的に「人生にはもっとレジャーとアドベンチャーが必要だ!」と感じているので、それを実践していた冒険野郎たちに俄然、興味が湧いてきたのです。
「ビバ!天狗倶楽部」
というわけで、横田順彌の『「天狗倶楽部」快傑伝』を買いました!